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2014.09.09
CEDEC2014レポート
#イベント #プログラマー

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スタッフブログをご覧の皆さま、こんにちは。2014年入社の新人プログラマーTです。

9月2日〜9月4日の3日間CEDEC2014に参加してきました。

朝から1000人以上も入るホールが満員になるほど人がいっぱいでした。

全体を通して印象的だったのが積極的に開発フローを自動化していこうという意識です。

例えば、「アセットパイプラインを構築する上で重要なこと」というセッションではアセット(画像や音楽等のゲームリソース)が自動でゲーム内で実際に使える形に変換される事の重要性を説いていました。

他にも、「ビルドエンジニア課題共有ラウンドテーブル」というセッションでは実際の業務で使っているビルド方法について議論が行われていましたが、コミットをフックしてJenkinsジョブを呼び出しファイルの移動からスモークテスト等をビルドサーバ上で自動で行うように設定しているそうです。

他のセッションでもJenkinsの話は度々出てきています。まだまだコードカバレッジの計測や仮想化環境を利用している企業は少ないようですが、リリースビルドの自動化やテストの自動化を行っている企業は増えてきているようです。

自動化やテストは人間の間違いを防止する技術です。この技術があるからこそ、複数人で開発しても間違わずに高品質な物を作る事ができるのでしょう。業界が成長していけば、いつかは向き合わなければならない問題だと思います。

ブースにもテストやマネジメントツールの企業が参入しており、話を聞いてみた所ゲーム企業向けに宣伝するのは初めてで、ツールの効率的な使い方は大学等の研究機関で現在研究中という事でした。

他にも、ラウンドテーブルやパネルディスカッション等、業界全体が試行錯誤していて明確な答えのない問題に業界全体で立ち向かっている印象でした。

数あるセッションの内、面白かったセッションを1つ紹介します。クロスボーダー「AI×言語解析」パネルディスカッションというセッションです。AIと触れ合ってみたい人はセッション中に紹介されていたKELDICに話しかけてみると面白いかもしれません。

https://twitter.com/KELDIC

段々とリアルになっていく3D技術に合わせて段々と要求されるAIは高度なものになってきています。リアルな3Dのキャラクターが壁に引っかかったり、同じセリフを繰り返したり等はせっかく熱中していても冷めてしまう原因にもなりかねません。このセッションではAIの言語認識について取り上げていました。

Eugene Goostmanという人工知能がチューリングテストを合格したという話を聞きました。チューリングテストとは受け答えを通して話し手が相手を人間かどうか判定するテストです。このテストに合格したという事は受け答えに関して人間と機械の区別がつかなかったという事になります。

大変未来を感じる話ですが、批判意見もあります。

このテストはチャット形式で行われており、入力と出力が明確に分かれています。

全ての行動に対する自然な動きを定義し、条件分岐させれば理論上は完全に自然なAIが完成するが、それは熱いやかんをさわったらとっさに手を引っ込めるという行動のような物で知能的ではないという批判です。確かに、全ての返答が質問の前にすでに用意されているのは違和感があります。

それに対して、チューリングテストを開発したチューリングさんは機能主義的立場を取っています。

いわく、空を飛ぶのに羽がある必要はない。

格好良いですね。空を飛ぶという目的があった時に鳥を作るだけではなく、気球を作っても目的は達成できる。つまり、人間の人工知能を作成する時、人間と同じ考え方(ニューラルネットワーク)等をする必要はなく、返答を網羅的に保存したビッグデータから答えを導いても人工知能を作成するという目的は達成できるという主張です。批判意見と肯定意見、どちらにも納得できる部分があります。

また、AIは技術的な観点だけでは判断できないと感じさせる話もありました。

このセッション中では度々ナラティブというワードが登場しました。あまり馴染みないワードですが、実体験力とでも言いましょうか、ある作品に触れた時にそれがまるで自分が体験したかのように感じる作品はナラティブが高いと表現されます。

人間の持つミラーニューロンという神経には他人がしていることを見て、我がことのように感じる共感能力が備わっていると言われています。ミラーニューロンを刺激する事でナラティブが高まると言われており、海外のゲームでは過激な表現を用いる事でミラーニューロンの刺激を実現することがあります。痛そうな傷口を見せられて、見てるだけで痛い!ってなった事はありませんか?その感情こそがナラティブであり、ゲームをプレイしている中で感じる確かなリアリティなのです。

このナラティブとAIの人間味とは強い関係があり、例えば貧しい家族の話をして命乞いをしているキャラクターがいて、そのキャラクターが攻撃を受けたら謝りながら必死で逃げたとします。このAIは長めの固定ストーリーを1つと何ワードかの謝罪しか語彙がありません。しかし、可哀想な姿や話がミラーニューロンを刺激する事によりAIに共感する気持ちが生まれます。この共感は確かにプレイヤーが感じた物であり、プレイヤーの経験そのものとなります。これはナラティブが高いAIの方がリアリティを感じるという事です。

AIのナラティブを強化してくれる要素として身体を持つという事があげられていました。

知能を作っているのに身体を持つというのは面白い発想ですね。身体とは世界との関わりであり、共通の感覚なので共感が生まれやすいのだと思います。例えば、現実世界に存在するロボットが一定以上の力で叩いたら「痛い!」と言ったとします。たったこれだけのAIでも愛着がわきませんか?

ゲームだとAIは仮想的な身体を持つことが多いです。よりナラティブの高いAIはこの仮想的な身体を大切にします。例えば、雨が降ってきたら雨の当たらない場所に移動する。戦闘が始まったら避難する等の自衛行動です。そして、こういう身体を優先したAIは共感を持ちやすいのです。

最近ではディープラーニングという技術が流行っているそうですが、こういった技術による人工知能とナラティブを高くした人工知能、様々なアプローチがあって面白いです。日本はナラティブが弱いと言われがちなので頑張っていきたいですね。

CEDECではこのセッションの様に業界で既に使われている技術の紹介やこれから使われるであろう技術の紹介、何故その技術を使うかの解説等、魅力的な情報がいっぱいでした。情報の発信を積極的に行うこの業界だからこそ、しっかりと学び日々の作業を効率化していこうと思います。そして、いつかは発信する側にまわって業界全体に恩返しをしたいですね。

余談ですが、会場内にEnergy Stationという場所があってエナジードリンクを配っていました。

電子機器にも人間にもエネルギーは重要ですね!

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